行く先なんてわからない
むこうのスリは
ナイフでバックを引き裂いてくる
なんて聞いてたから
家にあった古びた分厚い革のカバンに
包丁だけ突っ込んで
一番安い飛行機のチケットを買って飛び立った
普通はイタリアで修行なんていうと
先輩の紹介とかで働き先は決まってるもんだ
でも二十歳の俺にはなんもなかったし
別にそれでよかった
まだネットも普及してなかったし、携帯もない
俺にイタリアのことを教えてくれたのは
“地球の歩き方”っていう一冊の本だけ
ローマのテルミニ駅に着いた瞬間から
右に行くのか左にいくのかすら決まってない
どうやって仕事を探したかって?
飛び込みだよ笑
働きたいってレストラン見つけたら
片っ端から突っ込む
ドア開けて
“こんちは、一番偉い人いますか?
日本から来たんすけど、働きたいっす”
以上 笑
まぁそんなうまくことが運ぶはずもなく
たしか50件ぐらい連続で断られて
流石の俺も泣いた 笑
一番最初に仕事にありつけた店では皿洗いだった
割とすぐに成り上がって
一ヶ月後ぐらいにはパスタつくってた
まぁイタリア人ってサボりたいやつばっかりだからね
気に入られれば仕事はすぐにまわってくる
イタリアは地方によって全然料理違うから
慣れてきて居心地がよくなってきたら次の街へ
また1からスタート
その繰り返しだった
まぁ当然ここになんて
書き切れるほどの経験じゃない
あの頃の自分にもし会えたら?
そうだな‥
“お前、20年後、金髪になってるよ
んで、夜中に独りでピアノ弾いてるよ”
と言いたい 笑
行き先なんてわからない
今でも
誰にも
わからない
だから生きていられる
----------------------------------------------------------------------
ibrido
住所:静岡県静岡市葵区人宿町2丁目6の12
----------------------------------------------------------------------